●銀座のGALLERY TERASHITAで長橋秀樹+堀由樹子展。いま気づいたけど、二人共名前に「樹」がつく。
堀さんの作品は、色彩、絵の具の練り、ストローク、形態のどれもが手癖に流れているような傾向があり、それによって精度が甘くなっている作品がある一方で、その手癖を振り切ろうとするためなのか、ちょっとぶっとんでしまったような作品もあって、でも、おそらくそれは同じことの裏表で、必要なのは、この裏表の循環そのものから抜け出すことなのではないかと感じた。
おそらくこの感じだと、たくさん手数を入れても、その一つ一つの「手」が単調になっているので、「手」が積み重なることなく、同じところをぐるぐる循環することにしかならない気がする。むしろ循環するうちにだんだん鈍くなってゆくというか(キャンバスと油絵の具に対する感度において、余計な何かが一枚間に挟まっている感じというか)。だから手数よりも、例えば手を入れるリズムを、意図的に一拍二拍タメをおおくとるみたいに、その都度変えてみるとか、あるいは、制作のリズムそのものを変えてみる(思い切って全く制作しない時期をつくる)とかの方が必要なのではないか。
堀さんは、発表の機会が多い人気作家だから、発表のリズムに制作のリズムを無理に合わせるようなことがつづいていて、その無理によって生じたズレがけっこう溜まってきてるんじゃないかという気もした。もっと自分勝手に、自分の制作のリズムを優先させてしまってもいいんじゃないかとも思った。期限までに作品が出来なくても、スケッチブックにある作品を適当に額装して出しとけばいいや、くらいにずうずうしくてもいい気がする。