●深夜アニメ。三話まで観てきて『紅殻のパンドラ』が頭一つ抜けて面白く思われた。一番前面に出ているところだけを見れば、美少女キャラを愛でるのが主の軽めの作品で、物語はシリアスなものではなく、ギャグの連鎖のなかから立ち上がる小さなエピソード集といった趣きで、がっつりと物語を構築するというより、キャラたちから魅力や萌えを引き出すことの方に主眼があるようだ。実際、そういう作品なのだろうと思う。でも、そうであるにもかかわらず、設定や世界観の作り込みが、細かく、深く、しっかりしていることが端々から読み取れる。他愛のないシチュエーションを起動させるために、その地となる世界を過剰に精密に作り込む感じ(思想や批評は背景の方に埋め込まれている)。そして、背景の豊かさは結果として前面にも滲み出てくる。「昔のオタク」のつくる作品というのは、こういう感じだったんだよなあ、という懐かしさがある。
なんというのか、ビッグなアーティストの作った曲を、豪華なバンドメンバーが完成度の高い隙のない演奏に仕上げ、しかしその前でぽっと出のアイドルがゆるーく歌っているみたいな感じ。超絶技巧のアレンジと演奏の上に、素朴なメロディがのっかっているというか。あるいは、外から見えているところはユニクロだが下着はオートクチュール、みたいな(ちょと違うか…)。こういう豊かさはある意味バブリーなものなのかもしれない。
(そういう贅沢さの反対にあるのが『無彩限のファントム・ワールド』だという気がする。キャラもアクションもエロ表現も、作品の前面に出てくるところは質が高いのだけど、それらを裏から支えている世界の背景がそれに見合わずに薄いように感じられてしまう。)