●「Catalyst」の興味深い記事。「アメリカで5年間無職でも現金支給の実験 人びとの欲求は満たされるか?」。《アメリカ・カリフォルニア州拠点のベンチャーキャピタル「Y Combinator」が、同州のオークランドで「ベーシックインカム」の試験的な調査を開始する》、と。
http://ja.catalyst.red/articles/basic-income-usa
ベーシックインカムが資本主義の新しい段階だとすると、ヨーロッパよりもアメリカでの動きの方が期待できるのかも。
《Y Combinatorはテクノロジー分野のスタートアップに投資し、育成してきた実績で知られるが、なぜ同社がベーシックインカムの調査に乗り出したのか――。同社のブログには、こう書かれている。
「テクノロジーが発達するにつれ、従来の職が消え、新たな富が形成されるようになれば、国家政策としてベーシックインカムのようなコンセプトが具体化していくと確信している。そうなるとすれば、今の段階で以下のような疑問が浮かぶ。
ベーシックインカムを手にしたとき、人はビデオゲームなどをして怠けてしまうのだろうか。それともなにか新しいことを始めるだろうか。幸せで、充足感を感じられるのだろうか。人は生活費を稼がなくてはいけないというおそれから解放されると、より良い仕事を成し遂げ、社会への貢献度も増すのだろうか。ベーシックインカムの享受者はもらう以上の経済的価値を還元してくれるのだろうか――?
今から50年も経てば、『食べることができなくなるから』とやりたくもない仕事をしていたことは愚かだったと思われているようになるだろう」》
《先日、スイスでは国民投票ベーシックインカムの導入が否決されたが、Y Combinatorはこのシステムがうまく機能するかもしれないと考えている。
その主な根拠は、テクノロジーの進展が潤沢な資金を生み出すこと。現時点ではベーシックインカムの供給が難しく感じられても、テクノロジーが発達すれば今存在する仕事は機械に置き換えられ、生活するための資金は劇的に減るはずだという。》
●ちょっと前に、「起業家にベーシックインカム」みたいな記事をみかけたけど、そもそも、条件付けて、審査して支給するものをベーシックインカムとは言わないのではないか。無条件に、平等に給付というのが基本なのではないか。これではたんに普通の「投資」なのではないのか。これはこれでよいことなのだろうけど、ベーシックインカムとは関係ないなあ、と思った。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1606/07/news154.html
●もう一つ、興味深い記事。「深層学習(ディープラーニング)は自然現象であると考えると捉えやすい」(清水亮)。
https://wirelesswire.jp/2016/06/54115/
《(…)深層学習(ディープラーニング)は、研究対象になり得ないという主張もあります。
なぜなら、なぜ上手くいくのか、理由がよくわからないことがあまりにも多いからです。》
《要するに「上手く行ったから、上手くいく」という以上のことが言えないのです。》
《4月に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議」でのパネルディスカッション、「超AI緊急対策会議」では、東京大学の稲見昌彦教授が「人工知能が進歩しても、それは新しい”自然”として捉えれば良い」という発言をされていました。
確かに、機械学習は工学的な技術と考えるよりは、自然現象の一つであると考える方がしっくり来ます。
原理は解明されていないが工学的に制御できるから使う、という考え方は、なにも人工知能に限った話ではありません。
そもそも物理現象すら、なぜ起きるのか解明されていないのです。》
《深層学習は多くの点で自然現象に似ています。
まず、初期値が乱数であることです。
また、学習時にもランダム性を多用します。
たとえば学習時にランダムにニューロンを殺すドロップアウトや、接続を殺すドロップコネクトというテクニックがあります。
学習データセットに関してもランダムに読ませますし、ミニバッチも大抵の場合はランダムに学習します。
工学の分野で、こんなにランダム性に頼るものは他にちょっと見当たりません。
むしろ自然現象の方がはるかにランダムな要素が介入します。
通常、工学ではランダム性を廃するために定格を用いて条件を設定して、特定条件下ではランダムな振る舞いが全体に影響しないようにします。
ところがどうしても排除できないランダム性があります。それは人間や、環境です。すなわち自然物です。
深層学習は、いわば工学の世界に意図的にランダム性を取り入れることで、自然物である生物と似たような性質を持ったものを作り出すことだと考えることもできます。そもそもハイパーパラメータの最適解を求める方法がグリッドサーチしかないというのも、無茶苦茶な話です。》
《やがて訪れる時代には、深層学習は自然現象として研究されているでしょう。》
《(…)深層学習は、プログラミングを工学だと捉える人からもあまり評判がよくありません。
「なんとなく気持ち悪い」んです。最も深層学習を好ましくないと思っているのは、おそらく人工知能の研究者たちでしょう。
偶然、筆者の周囲には、人工知能の研究者が何人も居ます。それぞれ、人工知能の分野では有名な先生たちです。ところが、彼らに「深層学習面白いですよ」と言うと、とりあえず「あんなの気持ち悪い」という否定から入るのです。なまじ自分も原理を知っているだけに、「そんな方法でうまくいくわけがない。いってたまるか」と思っているわけです。
また、主流の人工知能研究者は、知識や感覚を構築主義的に解き明かすことを目的としています。
つまり「作ることによって知能の原理がわかる」という前提があります。
ところが深層学習の場合、「なんとなく生物の神経回路っぽいものを真似して作ったら動いちゃった」というのが前提です。》