●『光陰的故事』というオムニバス映画の、エドワード・ヤンが監督した『指望』というパート(これがエドワード・ヤンのデビュー作)をDVDで観たのだけど、母、姉、妹という女ばかりの一家に大学生の男性が下宿するようになって、その大学生に妹の方がときめいてドキドキしているのだが(汗をかいた男性の裸の上半身を凝視してドキドキ、みたいな、ベタなカットもある)、いつの間にか彼と姉とができていて、二人がベッドにいるのを妹が見てショック!、という、びっくりするほど紋切り型のお話でびっくりした。
とはいえ、時代設定、舞台装置、フレーミング、印象的な横移動、小道具、俳優の顔の好み、などをみると、まるで『牯嶺街少年殺人事件』のためのエスキースのような作品にもみえて、その意味では興奮した。登場人物の一人で、主役である少女と一緒に自転車に乗る練習をするメガネで背の小さい男の子(少女と同級生らしいけど、ずっと幼く見える)は、きっと、監督が自分に似た子供を探して自分の分身として出したのだろうと思い、ああ、エドワード・ヤンはこの映画ではこの位置にいるのか、とも思った。