●人間には、感情のセキュリティホールがたくさんあり過ぎるのだと、最近思う。そして、脳は、長い進化の過程で形作られた構造だから、構造は簡単には変えられない。感情のセキュリティーホールの存在を「意識した」くらいでは、そこをめがけて意図的になされる攻撃には太刀打ちできない。意識や意思ではパッチにならない(意識とか意思とかが、いかに役に立たないものかを実感する)。
たとえば、「炎上マーケティング」や「釣り」が、(残念ながら)ものすごく有効であるということを、トランプは、(資金も、経験も、後ろ盾も不足したなかで)大統領選挙で勝ち上がることを通じて証明してしまった。それは確実に、良識とか理性とかより---事実として---強い力をもった。あるいは、安倍政権に対する憤りが強い人で、反安倍政権的な内容の情報を、あまり精査することなく割合に簡単に信用してしまう傾向のある人はけっこうみられる。けっこうなインテリであるはずの人が、えっ、その記事、どう考えてもかなり胡散臭いんだけど……、というようなものを平気でリツイートしたり「いいね!」したりしているのをみると、知性もまた、感情のセキュリティーホールのパッチにはなり得ないように感じられる。
感情のセキュリティーホールが、人間の脳の生物学的な脆弱性によるものだとするのならば、コンピュータの作動を保護するセキュリティソフトが必要であるのと同様に、人間の脳の作動を保護するセキュリティソフトが、リアルに必要になってきているのではないか。
(スマホSNSなどを通じて、われわれが既に準-電脳化状態にあると言えるのだとすれば、必然的に、攻性防壁が必要になってくる。)
(洗脳にひっかからないためのソフトを脳にインストールすることと、洗脳そのものとは、いったいどこが違うの? という問題もあるのだけど。)
(何にしろ、意識や意思で何かを変えられることはほとんどないと思う。しかし、具体的に有効な技法や道具をつくる---みつける---ことができれば、何かを変えることは可能だと思う。)