●「ドンブラザーズ」、40話まで。ここにきてようやく、話の本筋が動き出した感じ。このシリーズにおいてシリアスな要素は、ほぼ、一人の女性に二人の男性(一人の女性に不連続な二つの人格)という「愛情関係における相容れなさ(原理的に解消不能な矛盾)」だけだった。怪物は倒しても死なないし(そして、倒しても何度でも怪物化するので対処療法でしかない)、敵対する者たちは馴れ合って、戦いは遊戯的、様式的なものに過ぎなくなっている(決闘で死んだはずのソノイやタロウも生き返ってしまう)。そこで行われているのは、揺るがないキャラ(特性)や設定があって、それが固定されたままで、そこに様々なパターンを当てはめたり、役割を入れ替えたり、関係をひっくり返したりしているだけだったとも言える。つまり、根本的な構図(基底的な構造)は変わらないまま、構図を揺るがさない範囲での表面的で遊戯的な配置換えのパターンが色々と試されているだけだった。
しかし40話では、今まで揺らぐことのなかった構造が変化するほど深く踏み込んだ出来事が起きた。一人の女性に二人の男性という構図に、これまで傍観者的な位置にいた女性(ソノニ)がもう一人、プレイヤーとして加わることになった。さらに、ドンブラザーズとの交流によりかなり人間的臭くなってきたとはいえ、基本的に感情が動くことなく、常に理知的、合理的に行動するはずの脳人が(おそらく自分の欲望のために)「嘘をつく(人を騙す)」ということが起こる。
一つ目の変化(ソノニが愛情関係の一項に加わる)は、ある程度予想できるのもだったが、二つ目の変化(ソノニが嘘をつく)は、予想外に深く踏み込んだ変化で、驚かされた。これはどうしたって物語全体(この作品のありよう)に影響を与えないわけにはいかない大きな出来事だ。
●40話は、脚本も演出も結構キレていたのではないか。ソノニが愛情関係に加わる事になる過程も(やや強引だとは思うが)説得力があるし、ギャグ要素としてのオニシスターの運転免許取得パートも効いていた。不穏要素としてのドン・ムラサメの存在感も増した。