2022/10/30

●『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』、アマゾンで三話まで観た。これはすごかった。特撮にも戦隊ヒーローにもまったく興味がないので、どのような歴史的な経緯があった末に「これ」が出てくるのか分からないのだが、戦隊ヒーローの文脈がどうこうとか、そういうこととは関係なく現代のフィクションとして観ても面白いのではないかと思う。

(戦隊ヒーローそのものに興味がないので、戦隊ヒーローの脱構築とか、現代的アップデートとか、そういうのは基本どうでもいいと思っているはずなのに、それでも面白い。ジャンルのお約束があるからこそ、その「お約束」をどう破るかが面白い、という、ジャンル内メタ「お約束」的な面白さとは違うものがあると思う。)

三話まで観てもまだ基本的な設定がよく分からない。というか、かなり先まで分からないらしい。

強い欲望や妄執によって人が怪物化する。その、怪物化した存在に対処する二つの勢力があって、一つが戦隊ヒーローである戦士たちで、もう一つが脳人(ノート)と呼ばれる謎の人たち(第三話までに三人出てくる)。戦士たちは怪物による被害を抑えつつ、怪物を救おうとする(人に戻そうとする)が、脳人たちは単に消去しようとするという態度の違いがあるようだ。だから、戦士と怪物、脳人と怪物が対立するだけでなく、戦士と脳人とも対立する。

(一話では二人怪物化するが、一人は脳人によって消去され、もう一人は戦士によって人に戻される。二話の怪物は戦士によって人に戻され、三話の怪物は能人によって消去される。)

戦士は五人いるのだが、戦闘の時に必ずしも五人集まるとは限らない。そして互いに、戦闘以外の時に何をしているのかを知らない(戦士間の交流がない、偶然の交流があっても相手が戦士だと気づかない)。五人のうちの二人は完全にCGで、普通の大人の身体とサイズが違っている。第一話には戦士は三人しか出てこない。第二話で一人現れ、第三話でもう一人現れて五人になるが、五人目の人物像などは、警察に追われているらしいということ以外、まだ何も分からない。戦士に選ばれると、何か大きな代償を支払わなければならないらしく、それで無実の罪を負わされているようだ。

物語の語り手の位置にいるのは、戦隊モノの紅一点の女子高生。彼女は漫画家で、若いながら大きな賞を受賞する。だが、ある時突然戦士に選ばれてしまい、戦うことを余儀なくされる。そして、戦士に選ばれた代償として、受賞した作品が「盗作」だとされて、仕事も信用も全て失う。そこに謎の男が現れて「桃井タロウという男の導きに従うことで、失われたものを取り返すことができる」というお告げが下される。彼女は戦闘をこなしつつ、桃井タロウを探す。実は、戦隊ヒーローのリーダーが桃井タロウなので、彼女は既に出会っているのだが、そのことを知るのは三話の終わりになってからだ。その間、彼女は何度も勘違いの出逢い損ないをする。

あらすじを書くと深刻な話のようだが、基本コメディで、すごくガチャガチャしてゴチャゴチャしている。様々な要素が重ね合わされていて、展開もものすごく速い。実写の上に、CGやデジタル処理によって世界が複数に重ねられている(現実空間の上に、メタ空間のようなものが重なっていて、空間内に隠し扉があって、距離をショートカットしたりできるし、中空の抽象空間で戦闘が行われたりする)。実写・特撮というよりアニメに近い感覚。一話25分なのだが、多くが詰め込まれているので40分くらいに感じられる。

第一話を一回観るだけでは、なんだこれはというインパクトと、やたらガチャガチャしているという印象のみで、面白いのか面白くないのかもよく分からないが、複数回観たり、二話、三話と進むうちに次第に説得力を感じるようになる(たんに無茶苦茶をやっているのではないことがわかってくる)。三話まで観て、縁と出会い損ないがかなり複雑に張り巡らされているのではないかという感じを持った。