2022/12/01

●「ドンブラザーズ」、37話と38話をプライムビデオで。「対決」と言う概念を無意味化しようとしているのはわかる。37話では、脳人とドンブラザーズの馴れ合いを批難し、対決を促すためにやってきた脳人の上司を、脳人とドンブラザーズが共闘して追い返す。38話では、料理対決がなされるが、対決は緊急事態により中断され、対決していた二人の料理人が共同で「異次元の食材」の調理を試みる。

ヒーローが怪物を倒すのは、欲に飲み込まれて怪物化した人を救うためであり(怪物を倒すと、怪物化した人が人に戻る、しかし、また何度でも怪物化する)、立場的に対立している脳人とドンブラザーズも、互いに交流がすすみ、対決のシリアス度は下がって儀式化している(追記、ヒーロー側のタロウと脳人側のソノイは、これまでに一対一で二度対決し、互いに一度ずつ相手を倒し、一度ずつ死に、一度ずつ復活している、死んでも復活が可能ならば、その対決はシリアスなものではないことになる)。「対決シーン」は毎回律儀にちゃんとあるが、こうなると、対決シーンいらないじゃんという感じになる。

ここまで「対決」を解体すると、どこまでも楽しくわちゃわちゃやってればいいという感じになるのだが、そうもいかないのは、シリアスな問題が二つ残されているからだ。一つは、ヒーロー内女性問題(一人の女性に二つの人格、それぞれの人格に対して別のパートナー)で、もう一つは獣人に囚われている人々をどうやって救うのか(「獣人」とはどのような存在で、彼らとどのような関係を持てるのか、脳人たちと同様に共存可能なのか)ということだ。また、ドンムラサメという兵器=存在にどのような落とし前をつけるのかも気になる。

しかし、ヒーロー内女性問題については、引っ張りすぎな割にはどこまで行っても進展がほとんどないと感じてしまうし、獣人に囚われた人々に関しては、ドンブラザーズも脳人も、ほとんど問題として認識していないように見える(そもそも、イヌブラザー以外は、獣人に人々が囚われていることを知らない)。警察(オニシスターの叔母)が獣人を捜査しているようなので、いずれは警察から情報が入るのかもしれないが。

(高校生であるオニシスターが、両親とではなく叔母と二人暮らしだという点について、今後、深く掘られることがあるのだろうか。)

突き詰めれば、ヒーロー内女性問題も「獣人問題」に含まれるので(オリジナルの女性と、獣人によってコピーされた女性という二重性が問題)、終盤の展開は主に獣人問題を扱うことになるのかもしれない。

「ドンブラザーズ」という作品の、面白さも、つまらなさも、「なんでもありで楽しくわちゃわちゃ」の方向にも、「シリアスな主題の展開」の方向にも、どちらにも振り切らない中途半端さにあるのではないかと思う。この「中途半端さ」が、面白い中途半端さに着地するのか、つまらない中途半端さに着地するのかが、今後の見どころではないかと思う。