2023/05/24

⚫︎昨日まで三日分つづけてアップした「文房具絵画」についてちょっと解説。作品はどれも「形」としては下の四つの形だけで構成されています。二つの正方形を二つに千切ってできた四つのパターンです。単純に、色の異なる何枚かの色紙を、重ねて同時に手で千切るので、同じ形のパーツが複数できます。

 

正方形を二つの千切った形を用いるのは、二つの形が、互いを写しあう鏡像的な関係になるからです。上の形の余白(虚の部分)の形が、下の形の実の部分の形となり、二つの形は同じ輪郭線を共有します。

つまり、これらの作品は、「輪郭線」としては二つのパターンしか持たないということです。二つのメロディしか持たない曲のように、あらゆる形は、他の形の「こだま」としてあわれます。

同じキャラクター(形)が複数の場所に繰り返し出現するという意味で、過去に吉祥寺の「百年」で展示した作品の延長線上にあります。

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ただ、この時の作品は「型」を使って同一のキャラクターを反復させるのですが、「文房具絵画」では、実際に同じパーツが繰り返し使われます。諸キャラクター、諸パーツの関係はフィックスされず、つくっては壊され、またつくっては壊されて、ただデータだけが残ります。

また、以前の作品は(というか、ここ十年以上のぼくの作品のほぼ全ては)、形と形は重ならず、絵の具と絵の具とは層を作らず、平面の中に分散的に配置されるのですが、「文房具絵画」では、キャラクターとキャラクター、パーツとパーツは積極的に重ねられ、層的な前後関係を作ります。それにより、同じパーツが、時には図として形を示し、時には形を後退させて色の広がりとなり、時には、形と形、色と色とのぶつかりを緩衝する媒介的な役割を負ったりします。同じキャラクター、同じパーツが、場面によって異なる役割を持ちます。

また、それぞれのパーツは、それが正方形であった名残りとして、二つ(以上)の直線の辺を持ちます。パーツは、「形(図・要素)」でありながら、それ自身がフレームであったという記憶を保持しています。

(層を重ねるのだけどレイヤーという概念とは違う、ということについて、まだ自分でも言語化できていない。)

⚫︎「百年」での展示の時のトーク

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