2023/08/24

⚫︎今、動画配信では観られない『ルパン三世 風魔一族の陰謀』の英語字幕付き版がYouTubeにあったので観た。山田康雄ではなく古川登志夫がルパンを演じているやつ。おそらく権利関係をクリアしていないと思われるのでリンクは貼らないが、検索すればすぐ見つかると思う。

アニメが好きな人なら必見で、昭和アニメの技術的到達点とも言える作品。お話はあまり面白くないし、クライマックスは「カリオストロの城」の焼き直し感もあるが、そんなことはどうでも良くなるくらい、ほぼ全てのカットが面白く(特に、有名なカーチェイスの場面は本当にすごい)、隅から隅までみっしり詰まっている。アニメのメディウムスペシフィック的な面白さという点では「カリオストロの城」よりも優れているのではないかとすら思う。

Wikipediaには次のように書かれている。作品としてのトータルな何かというよりも、個々の場面や細部の充実がすごいというのは、このためもあるかもしれない。

本作では作品の責任者である監督が存在せず、代わりにテレコムを率いるアニメーターの大塚康生が監修を務め、原画マンや作画スタッフがシークエンスごとにアイデアを出し合い作画する、というかつての東映動画的なスタイルとなった》。

ただ、良くも悪くも昭和感が強く、センスとしてやや古い感じは否定できない。「風魔一族」は87年で「カリオストロの城」が79年なので、「カリオストロの城」の方が8年も「古い」のだが、並べてみると「カリオストロの城」の方がずっと新鮮に見えると思う。同時代の(しかも極めて優れた)作品と並べてみた時に感じるこの「新鮮さ」が、今では見えなくなってしまっている、宮崎駿が日本のアニメに持ち込んだ「新しさ」なのだと思う。

大塚康生には美少女が描けない問題、というのも確かに、この作品を古い感じに見せる原因の一つとしてある。描けないというか、あまり興味がないということだろう。アニメが、美少女への欲望を動力にして動いていくということを本格的に始めたのはおそらく宮崎駿で、そしてそれは、庵野秀明にも新海誠にも受け継がれていると思うが、そこのところを、大塚康生は最後までどうしても腑に落とせなかったのではないか。美少女の決め顔がアクションよりも大事だとはどうしても思えない、と。大塚康生宮崎駿の違いについては、もっと繊細にみていかなければならないことだが。