朝。トラックの荷台に被せられたグレーのシートに、木の枝の影がさす。風でぱたぱたゆれてる。光と影もゆれる。荷台に掛けられた紐。垂れ下がる紐の結び目。
工事現場。掘り起こされた土の断面に見える層。横縞模様。張り渡してあるトラロープ。ずっと遠くまで延びている。つがいのカラスが飛ぶ。旋回する。空の青。珍しい黄緑色の金網。
午後。縦長に伸びるすすきの曲線。空き地に群生している。イエローオーカーと黄緑、すこしだけ赤味がかってるのもある。不必要に長い電信柱、に、初めて気づいた。前からこんなだったのか。
子供を抱いた母親。白のロングスカート、おそろいのデニムのジャケット、踵の高いブーツ。立ち止って何かを眺めている。老人が連れている白い大きな犬か。しかし、通り過ぎてもまだ立っている。
50ccバイクの軽いスカスカのエンジン音。乾いた空気。埃がたつ。
幼稚園のバスが停まる。母親はこれを待っていたのだった。帰って行く3人の後ろ姿。
駐車場を大勢の子供たちが横切るのがモニターに映る。一時停止の車から微かに漏れてくる音楽。排気ガスの匂い。トラックの荷台に乗っている小型ショべルカー、の、鈎型に曲がっている腕。鉄サビの色。重量感。サイドブレーキをひく、キュッ、という音。車体が僅かにゆれた。
遠くまで見える道路の向こうの方から、3人のコートを着た高校生がゆっくりと近づいてくる。長い影。空き地に、すすきに埋もれたように立つ看板に、西日が反射して、まぶしい。< 野菜売りのじいさんが林檎をくれた。傷モノや虫食いや、形が歪んだものなど、値段のつかないやつ。色も悪く、水分がなくてパサパサしてそう。でも、齧ってみると、果汁が豊か、甘味も酸味もともに強くて、シャキッとした味。見かけからは想像もつかない。じいさん、ありがとう。>
夜。誰かが忘れていったZIPPO。カッ、チャッ、カッ、チャという金属音。火をつけて、炎をしばらく眺める。オイルの匂い。カシャッ。消す。
サッカーグランドから体育館にかけての坂道を自転車でダァーッと下る。キリキリキリキリーッとチェーンの鳴る音。ポールの鎖。南京錠。手が真っ黒。道路に埋め込まれた警告燈が点滅する。< バイト先で同僚に、リー・コニッツボサ・ノヴァのCDを聞かせてもらう。けっこういい。企画ものらしい。そんな大御所に企画ものをやらせてしまうのか。ボサ・ノヴァの複雑なリズムとlooseともいえるサックスがハマッてる。繊細なメロディを尊重しつつ展開する、繊細なアドリブ。しかし、タイトルが「 ブラジリアン・セレナーデ 」って・・・。なんでそんなタイトルにするのか。>