とても蒸し暑い夏の日の午後

とても蒸し暑い日の午後、適度に冷房の効いた場所でうたた寝をするほど気持ちの良いことがあるだろうか。イスに坐ったまま上体を反らせて(イスの背もたれがしなる)、壁に後頭部をつけて目を閉じる。外から、蝉の声がじわじわと染み込んできて、それに混じってカラスの鳴き声も時おり聞こえてくる。頭上では、エアコンがビビビビビビと小さな震動を伴いながら、ブーンブーンと大きくうなっている。頭のなかには、窓の外にあるはずの木々に重たくついている緑の葉の一枚一枚に光があたってきらきらとして、それらが風でゆっまりとうなるように揺れているイメージが、特定の視点をもたない奇妙に歪んだ空間として拡がっていて、満たしている。それと同時に、何か数学の問題でも解いているような、複雑で抽象的な思考も可動しているようなのだが、その考えには対象がなくて、ただ頭の働きだけがあるような感じだ。眠りと覚醒の中間あたりをゆっくりと行ったり来たりしながら彷徨っているような時に、ふと、今朝方にみた夢を、その細部までくっきりと思い出したように思うのだが、それはその後すぐに再び忘れてしまうのだった。そのうちに短いながらも深い眠りにスッと落ちこんで行き、そしてそれがパッと断ち切れるようにしてスッキリと目が覚めたのだった。