トムと紫陽花

雨、というほどではないのだが、アトリエのある中腹の辺りは真っ白い靄で覆われていた。格子状に組まれた垂木に巻き付いている朝顔の蔓から咲いている紫色の薄い花びらが、湿ってしんなり下を向いていた。隣の犬は、セメントで出来た三和土に新聞紙を敷いて、その上で小さく丸まっていた。もうほとんど動けないのだろう、鎖も首輪も外されていた。