トムと紫陽花

アトリエの隣の犬は、すっかり弱ってしまっていて、1日じゅう地面に伏せたままでほとんど動けない状態だそうだ。あれほど臆病で、誰彼かまわずに、見境なく吠えまくっていた犬が、触れるくらいに近くに寄って顔を覗き込んでも全く反応しない。もう、どうにか生きてるって感じなのよぉー、と隣のオバさんは言うのだった。それでも、アトリエにいると時おり、クウゥゥゥ~ゥォォオオンとお腹が鳴るような情けない声を上げるのが聞こえてくるのだった。お隣りは、通りに面した窓のところに、垂木を格子状に組んで取り付けていて、そこに朝顔の蔓を巻き付けている。それを目隠し代わりにして、窓は涼し気に明け放してある。紫色の小さな花がいくつかついていた。