ある日のこと。

風邪をひいたらしい。皮膚の内側に熱が籠っている。節々が痛む。アルミ箔を噛んだときのような寒気が時々ジーンと背筋を駆け抜ける。鈍い痛みが後頭部からコメカミにかけて重く響く。脱力している。ボーッとしている。外を歩いている人のかん高い笑い声。子供の奇声。急ぎ足で歩く人のコツコツ響く靴音。バイクが走り抜けてゆく音。口のなかに、嫌な匂い、嫌な暖かみの息が籠っている。ピピピッ、ピピピッ、と、体温計が控えめに電子音をたてる。窓から見える、色が薄くて白っぽい空。西側が暮れかけている陽でほんのれオレンジかがっている。乳白色をしたような夕方の空気。ヌルヌルした汗を脇の下にかいている。シャツを取り替える。重たい体でゆっくりと起き上がり、それを引きずってヨロヨロとトイレにたつ。悪寒がはしる。