07/10/25

●『リング0』(鶴田法男)をDVDで。ぼくには「リング」シリーズのどこが面白いのかわからない。特に『リング2』など、かなりひどい映画だと思う。だが、これはけっこう面白かった。この映画は、途中までは「リング」シリーズの一本というよりも、完全に鶴田法男の映画で、つまりは、繊細な感情の表現としてのホラーになっている。呪いのビデオとか、貞子の呪いとかとはほとんど関係なく、劇団内部での複雑な人間関係と、そこで生じる感情的な軋轢によって、幽霊が発生する。関係や感情の摩擦によって、微妙に空間や時間が歪んでゆく様を、鶴田監督はいつも的確に捉える。主演の仲間由紀恵は、女優としての力量としては、『リング2』の中谷美紀に比べるとかなり劣るといわざるを得ないのだが、『リング2』の中田秀夫監督が、中谷美紀の「一番いい顔」を最後のショットまでとっておくために、(そこから逆算して)映画の途中ではその魅力をかなり抑制せさている(というか、ぶっちゃけ殺している)のに対し、『リング0』の鶴田監督は、それぞれの場面において、その都度、仲間由紀恵の良い表情を最大限に引き出し、それを拾おうとしているように思われる。『リング2』のつまらなさと、『リング0』の面白さとの違いとは、つまりはそういうことなのだと思う。
映画は終盤、仲間由紀恵を劇団員たちがよってたかって撲殺してしまうところから、鶴田的世界から、高橋洋的なグラン・ギニョール的世界へと移行する。これはこれで面白いのだが、しかし、高橋洋的グラン・ギニョール世界と、鶴田監督の資質とはあまり相性が良いとは思えず、映画としてはやや低調になる。
●それにしてもぼくは何故、こんなにも幽霊のでてくる話が好きなのだろうか。ぼくは基本的に、ホラーを観てもほとんど「恐い」とは思わない。それはほとんどはじめから、分析的な視線でしか観られない。にもかかわらず、幽霊の話だというだけで、観たくなってしまうのだった。