●ほぼ、八月いっぱいかけて書いていた作家論を、八月最後の日にようやく書き上げることが出来た。と、書いて「書き上げる」という言葉の使い方が正しいのかちょっと不安になる。完成した、というのではなく、とりあえず最後まで書けた(辿り着けた)、ということだからだ。
当初、四十枚を目安に書き出したものが、結局、ほぼ九十枚という長さになってしまっていた。ここでぼくは、ただ作品を読んで、それについて分析するということだけしかやっていない。いかにも「批評」っぽく、作品と結びつけて何か気の利いたっぽいことを書くのが今のぼくにはひたすら恥ずかしいこととしか思えないので、ただただ、作品の分析のみが九十枚分つづく、ということになってしまった。書いたはいいけど、これは「読み得る」ものなのかと不安になる。これは作家論といえるのだろうか、と。
(最近、必要があって何年か前に自分が書いた文章をいくつか読み返すことがあったのだが、いかにも「批評」っぽく書こうとしていいる手つきが見えて、それが何かとても恥ずかしかった。)
書く事はとても楽しかった。それは、書いた対象の作家の小説が、何度読み返しても決して飽きることのないような充実したものだったからだ。引用するために書き写している最中に新たな発見があって、考えていたことが覆される、という事が何度もあった。