●新宿でジュンク堂紀伊国屋書店をのぞいて、紀伊国屋のDVDのコーナーに立ち寄ったら、店内のモニターで『崖の上のポニョ』がかかっていて、ちょうど、例の、洪水のなか親子で自動車を走らせ、ボニョが波の上を走る場面だった。ちらっと見たらもう目が離せなくなって、店のなかなのに仁王立ちするみたいな姿勢で見入ってしまった。水滴の一粒一粒までが、独自の動きをしている。波=魚がうごめく。その上をボニョがはしるはしる。バケツが転がる。波のなかから、カエルみたいになったポニョが現れ、道路を二、三歩歩く。ふと気がつくと、周りにも人が大勢集まっていて、おっさんから小さな子供まで、テレビを囲むようにして皆、画面に見入っているのだった。その光景にも心を動かされた。よほど、DVDを買ってしまおうかと思ったのだが、お金がないこともあるし、これをウチの小さなテレビの画面で観るのは申し訳ないような気持ちもあって、買わないで帰った。帰りの電車はラッシュの時間とぶつかってしまった。かなり混んでいる中央線下りの通勤快速のなかで、鞄の中の携帯電話が振動するのを感じた(この鞄は、今日、荷物を詰め込み過ぎてファスナーが壊れてしまい、口が開きっぱなしなのだった)。その時の時刻からして、「あ、もしかして」と思い、次の停車駅で下りて着信を確認して、かけ直し、磯崎さんの芥川賞受賞を知った。