●ここ数日、公開に先立ってサンプル版でいただいた『乱暴と待機』(冨永昌敬)のDVDを繰り返し観て、それとともに、『亀虫』、『オリエンテ・リング』、『コンナオトナノオンナノコ』などを観直した。正直言って、『パンドラの匣』を観た時には、冨永昌敬ってこんなに冴えない感じの監督だったっけ、と思ってしまったのだが、これらの作品を観直して、そんなことはなかったことが改めて確認できて、よかった(『パンドラの匣』は、もともとの「お話」がつまらないのだ)。
ぼくは本谷有希子の小説をひとつも読んだことがなくて、それは、きっと自分には合わないに違いないという先入観があるからなのだが、『乱暴と待機』も、観始めてすぐの時点では、「あー、やっぱり、オレ、これダメだわ」と感じてしまったのだが、最後まで観たらとても面白かったので、よかった。
ただ、オダギリジョーの時も思ったのだが、冨永監督には、ふつうにしていれば充分に面白い俳優を、いじり過ぎてつまらなくしてしまうという傾向があるように感じられて、『乱暴と待機』の浅野忠信もそうで、浅野忠信がいまひとつ良くないことが、この映画の大きなマイナスになってしまっているように思った。とはいえ、この役は浅野忠信でなければ成り立たないのだとも思うけど(踏切を走る浅野忠信のロングショットはすばらしかったけど)。
対して、小池栄子がすごくよかった。最初に、「オレ、これダメだわ」と感じたのも小池栄子の演技とキャラについてなのだが、最後まで観てゆくと、「これダメだわ」と思ったその感じがそのまま突き抜けて、さわやかさと威厳のようなものが感じられるところまで至っていて、「ごめんなさい、ぼくが間違ってました」という感じになった。この人って、こんなに良い俳優だったのか、と驚いた。