●「早稲田文学」七号はまだ発売されてはいないのだけど、ぼくは執筆しているので本がもう手元にあって、そこに掲載されている西川アサキの小説(これは小説と言っていいと思う)「剣山を横へ。お前はもう死んでいる」はすごい。西川さんはもっと小説を書いた方がいいのではないか。小説という形式だと、西川さんの思考の運動性がダイレクトに出る気がする。
ただ、小説には「意味が分からなくても面白い小説」と「意味が分からないと面白くない小説」があって、例えばグレッグ・イーガンとかチャールズ・ストロスとかの小説は「意味(ここで意味は文学的比喩のようなもののことではなく、思考実験としての意味、あるいは思弁的な意味であって、コンセプトと言ってもいいかもしれない)」が分からないと少しも楽しめないのではないかと思うのだが(どんな細部にも「意味」があり、その意味と意味の繋がり方にも意味がある)、西川さんの小説にもそういう感じはあって(ただ、西川さんは完全に「そっち側」というわけではない感じのところがまた面白いのだけど)、だから書かれていること(AIとか量子論とか宇宙論とかライプニッツとか)に関する最低限の予備知識はないと、入っていけない感じなのかもしれないとは思う。
とはいえ、西川さんの小説は意味(コンセプト)が重要というより、「西川アサキの頭のなか」のシミュレーションみたいな感じになっているのだと思う。つまり、頭のなかで、意味と意味とがどのように繋がり、思考が展開し、スパークしているのかが、(分かり易くするために幾分かは均してあるだろうけど)かなり直接的に形になっているのではないだろうか。だから重要なのは意味ではなく、意味と意味とのつながりがみせるイメージだったり、思考の運動そのものだったりするのだけど、それを追いかけるためには、ある程度は意味が押さえられる必要がある、ということなのだろう。
●まだ発売されていない本から長く引用するのははばかられるので、一行だけ。
≪瓶の落下。俺の一日。全て、しょせん宇宙に過ぎない。≫
さわひらきの作品、YouTubeでも観られるのか。やはり、単体で映像作品として観ると、とても魅力的ではあるけど、面白いとまでは言えない。いや、でも、飛行機の飛ぶ速度とか素晴らしいけど。
http://www.youtube.com/watch?v=PD_hvfLZ2hM