●昼過ぎくらいに磯崎憲一郎さんから「録画して置いた日曜美術館熊谷守一見たんだけど、あれはいかにも磯崎憲一郎が好きそうな絵だよね?」というメールが来た。そのしばらく後に、「いかにも磯崎憲一郎が好きそうな絵だ、というのは自分で言っていてウケたから偽日記に載せてよ」というメールが来た。
セザンヌは七十歳になる前に死んだ。熊谷守一は七十歳でクマガイモリカズ様式に行き着いて、九十七歳まで生きて作品をつくった。セザンヌは死ぬのが三十年はやすぎた。クマガイに比べれば、セザンヌは夭逝したと言える。
セザンヌがあと三十年長生きしたとすれば、1930年代半ば過ぎまで生きることになる。セザンヌは、世界大戦の起こる世界に耐えられたのか。ロシア革命をどう受け止めたのか。エクス=アン=プロヴァンスのアトリエで、周囲にますます人を寄せ付けなくなり、人間への呪詛と老いへの嘆きの言葉を吐きながら、孤独に絵を描き続けるセザンヌを想像する。
●ぼくは日曜美術館を観ていません。