●夕方、午後七時前くらいに買い物のために外に出たのだけど、台風のせいなのか道に人がまったく歩いていない(車は通る)。まっすぐつづくずっと先まで誰もいない。この時刻に人気がないのはかなり妙な感じ。雨は降っていないし、荒れた感じで風が吹いていて、ガタガタ、ヒュンヒュン、ガサガサッ、ブオーッ、という音があちこちから聞こえてくるけど、危険を感じるほどに強風ということもない。生暖かくでねっとりした風。薄い雲が空を均等に塞ぎ、その雲がさーっと早く流れている。雲の奥には滲んだ赤い月。空は青白くぼんやり光っているのに、地上は暖色のフィルターをかけたように赤っぽく染まった感じ。これから家が建つのだろう更地の盛られた土がやけに毒々しく赤く見えて、そこに立ってぶるぶる震えながらはためくのぼりの青が内側から発光しているみたいに見える。ドラマなどでわざとらしくて安っぽいエフェクトをかけたような住宅の夕方の風景に人がいない。死んでしまったことに気付かないまま歩いているとこんな感じなのか、と思った。湿度のある重たい風。先の方に見える、スーパーから漏れている光はいつも通りで、しかし駐車場には極端に車が少ない。中もさぞ閑散としているのだろうと思ったら、店に入ってみると、いつもよりは少ないがけっこう人がいた。スーパーの中は普通に現実で、ちょっと期待外れだった。