●『心の哲学入門』(金杉武司)は、英米系(分析哲学系)の「心の哲学」に入ってゆく「慣らし」として、さらっと読んで、すぐにもう少し難易度の高い本に進もうと考えていたのだけど、読んでいるうちに「入門書」としてとても優れた本ではないかと思えてきたので、少なくともここに書かれていることについては完璧に理解して(納得できないことについては、どう納得できないかはっきりさせて)から次にゆくことにして、改めてじっくり(図書館の本なのでいつものように本を直接汚せないので)ノートをとり、考え込みながら読むことに方針を変えた。
あくまで大雑把な印象にすぎないものだが、英米系の「心の哲学」の特徴として、徹底して論理的に詰めてゆく(この側面ではきわめて浮世離れしている)ということがある一方で、実在(世界)に対する態度の不思議な素朴さという側面もあるように思えて(この側面ではきわめて保守的、常識的であるように思われる)、このギャップの感じが味わい深い(時に、面白いと思い、時に、困惑する)。基本、理屈だけで出来ているから、大陸系の哲学みたいに「プラトンから学び直して来い」みたいな教養による排他性はないのだけど(そこに書いてあることが理解できれば理解できる、はず)、「えっ、なんでそれが前提として成り立つの?」みたいところで疑問が生じると、すくなくともその「納得できなさ」を自分なりに納得するまでは先に進めなくなる。