2020-10-03

●(昨日からちょっとつづく)『女地獄 森は濡れた』(神代辰巳)で中川梨絵は、自然ではない、人工的で変な調子でセリフを喋るし、セリフのトーンが途中で何度もころころ変わる。そして、これはこの作品の独自の質を成り立たせるために必然的なことのように思われた。もし、普通に自然と言われるような、お金持ちの奥様風の演技がなされていたとしたら、この映画の世界は成り立たず、その面白さと説得力は大きく減じていただろうと思われる。

しかし、中川梨絵トーク(のレポート)を読むと、これは監督による演出ではなく、アフレコの時に中川梨絵が勝手にやってしまったことだという(監督は普通にやってくれと怒った、と)。

《アフレコで普通にやっちゃうとつまらないから、変なアフレコにした。高い声と低い声で、抑揚をものすごくつけて、上品さと下品さ、エキセントリックさを表そうと。神代さんは怒って、普通にやってくれと。神代さんはみなさんの意見を聞くタイプで、最後はどういう音楽をかけようか。スクリプターの方はクラシックって言ってたけど、私が凄惨な出来事の後はラジオ体操でしょ!って、神代さんは私に負けて、厭な女だなって。アフレコも、あれで通っちゃった(笑)。》

(「私の中の見えない炎」中川梨絵 トークショー神代辰巳監督特集)レポート・『恋人たちは濡れた』『女地獄 森は濡れた』(2))

https://ayamekareihikagami.hateblo.jp/entry/2015/03/25/125537

このレポートを通して読むと、中川梨絵は、撮影の時、当時とても評価が高かった共演の伊佐山ひろ子にかなり対抗意識をもっていたみたいで、そのことが、このような工夫を生んだのかもしれないと思った。よい作品というのは、その場を構成する様々な事柄が影響し合ってできるものなのだなあ、と。

●『彼方より』(高橋洋)は、九月末までの限定配信とされていたが、今のところまだ観られる。

https://www.youtube.com/watch?v=ar8hicvEzo0&t=7s

●今年も「スナックうめ子」があってほんとによかった。TIFが続く限り「スナックうめ子」も続くことを願う(「うめ酒の休肝日」も復活してほしい)。