2021-09-29

●眠っていたのはほんの十分くらいか。夢のなかで背中をかいた。右の手のひらをグーにして、親指だけ立てて背中にまわし、手首を支点に上下に動かす。夢の中でのその運動は、現実の身体にも作用して、右の手首が左右に動く。その動きがきっかけで目が覚める。そのとき、現実空間で右のてのひらは横たわった体の(背後にではなく)右側にある。

しかし、自分の空間感覚では、覚めてもほんの少しの間、右のてのひらは背後にある。背後にあるはずの右手首を動かしている感覚がある。背後にある右手首を動かしているはずが、体の右側にある右手首が動いていた。背後にあった「動かしている感覚」が、なぜか右側面で「動いている」。えっ、では、背後にあった右のてのひらと手首はどこに消えてしまった…。

この時、「背後にあると思っていた右のてのひらが、実は体の右側にあった」とは感じていない。背後にあったてのひらと手首、背後で動かした「動かし(運動の能動性)」が、その感覚だけを残して消え、まったく異物のようにして(入れ替えられた偽物のように)、体の右側で、まるで他人のもののような右のてのひらと手首があって、その手首が勝手に動いている。ぼくは、手首の動きを感じてはいるが、それを動かしている主体は自分とは思えない。

ぼくの運動の能動性は背後にあり、それは消されてしまった。その代わりに、強いられた右手首の動きが右側にあり、その強制された「動かし」がぼくの身体に連結されて、眠りがさまたげられた。そのように感じたのだ。