2022/02/01

●「豪の部屋」の、しののめしなの回。しののめしなのが映画にハマるきっかけが父から教えられた『仁義なき戦い』だったというのがとてもよい話。父と母は離婚していたが、父とは頻繁に会って、一緒に映画を観たり、読んだ本の話をしたりしていた。小四の時に娘が『アウトレイジ』が面白かったという話をすると父は「そんなんは違う」と言って『仁義なき戦い』を勧めた、と。つまり「こっちがホンモノなんだ」ということだろう。『アウトレイジ』に興味を持った娘にすかさず『仁義なき戦い』をサジェスト出来る父親ってすごいなと思う。作品を見抜く力、映画史の知識、教育者としての資質、これらのすべてがあってはじめて出来ることではないか(マウントをとるような調子---あるいは関係性---だったら娘は反発しただろう)。

●改めて『仁義なき戦い』を観てみたのだけど、当然のことだけどめちゃくちゃ面白い。当時としては破格に「粗挽き」な作られ方の映画で(とはいえ、60年代から既に、松竹ヌーヴェルヴァーグやピンク映画など「粗挽き」な映画は存在していたのだが)、かなり多くのカットで、セリフや背景音に混じってカメラがまわるカラカラいう音をマイクがひろってしまっていて、それがそのまま使われている。そういう「攻めてる粗さ」のなかでこの傑作が生まれたのだなあ、と。それと、この映画は戦後の呉と広島の話で(呉と広島の関係の話、ともいえる)、その意味で『この世界の片隅に』の、その後の話とも言える。