2024/02/29

⚫︎中田秀夫「霊ビデオ」(「学校の怪談f」)がニコニコ動画にあったので観た。97年の作品だから、『女優霊』より後だけど『リング』よりは前という時期の短編。ブレイク直前の勢いを感じる。Jホラー初期の短編は、今ではなかなか観られないが、ニコニコ動画にはけっこうある。この頃のJホラーは、今まさに新しい何かが生まれつあるという、生き生きした感じに溢れている。ホラーを観ていてそのように感じるというのは不適切かもしれないが、今観てもワクワクするというか心躍る感覚がある。

この作品と、鶴田法男「何かが憑いている」(「学校の怪談 物の怪スペシャル」)は、人間関係系のホラーの傑作だと思っている。どちらも、中学の時は仲が良かったが、高校に入って疎遠になってしまったという二人の女の子の関係が軸になっていて、その関係を丁寧に描き出すことの背景から「幽霊」が浮かび上がってくる。幽霊が、人間関係や人の感情の動きに還元されるわけではなく、霊は霊として自律した存在だが、それでも、人と人との感情の間に幽霊が入り込んでいてその描写と不可分になっている。おそらく、高橋洋黒沢清は、こういうことはしないだろう。

たとえば、黒沢清「花子さん」(「学校の怪談 物の怪スペシャル」)でも、学生時代の人間関係やいじめなどが絡んでくるが、いじめで自殺した人の幽霊と「花子さん」とは全く別の論理で動いている。「花子さん」は人間関係と全く関係なく独自のあり方で作動する呪いだ(「花子さん」の脚本は黒沢清ではないが)。

ここで、人間関係系のホラーで幽霊を誘発する関係がほとんど女性同士の関係であるというところに、明らかになんらかのバイアスがあるのだが、このバイアスについてはただちに否定するのではなく、丁寧に解きほぐして考える必要があると思う。