●新宿のジュンク堂のフェアが九日まで延長されたと聞いたので、覗いてみた(http://d.hatena.ne.jp/m-sakane)。第二期のガチガチ篇と第三期のごちゃごちゃ篇の本が同時に並べられていて、ちょっとすごい眺めだった。
第二期の一冊として選んだけど期間中に入荷が間に合ってなかった『シャルル・ボードレール/現代性(モデルニテ)の成立』(阿部良雄)や『ラカン社会学入門』(樫村愛子)もちゃんとあった。
どうしても精神分析に対する抵抗感がある人も、『ラカン社会学入門』に収録されている「コミュニケーションの主体と意味作用」を読むと、随分感じ方がかわるんじゃないかと思う。この論文の前半は、社会学におけるコミュニケーション理論の現状を記述し、批判しつつ、そこに精神分析の知見を導入することの意味を述べている部分なので、まあ、そこはとりあえず読まなくても、中盤以降の、精神分析の基本的な考え方が系統だって述べられている部分をまず読んでみると、精神分析がいかに立体的な思考の実践なのかが、よく分かるのではないだろうか(独自の用語の説明がされているだけの精神分析入門とは違って、その考え方の根本が、順序だって述べられている)。この本はかなり手に入り難いと思われるので、この機会に是非。
あと、これも今ではかなり入手困難だと思われるのだが、集英社のアートギャラリーという美術全集のシリーズはどれも作品の選択や図版の印刷がかなり良い(なにより図版が大きいというのが良い)のだけど、なかでも「ジャクソン・ポロック」の巻はとても良いもので、これ一冊をパラパラと眺めているだけで、ポロックの作品の魅力や面白さ、その可能性の大きさ、そして、その限界と行き詰まりとまでもが、ひしひしと伝わって来る。(ただ、テキストは全然ダメで、読まない方がよいと思うくらいなのだが。)ポロックの作品を、キャンバスに絵具をぶちまけたような「アクションペインティング」だ、くらいにしか思っていない人は、この本を観るとその印象が大きく変わるのではないかと思う。学生の頃、興奮しつつなんども繰り返し観たこの画集が今でもボロボロになって手元にあるのだが、今観てみても、ポロックはやはりとても魅力的な画家なのだと改めて何度も感じる。ポロックの多くの作品は、あまり評価の高くない晩年のユング的な絵画まで含めて、そこから何かがはじまりそうな「予感」を濃厚に感じさせるもので、「そのつづき」を自分でもやってみたくなってしまうようなものなのだ。この本も、この機会に出来るだけ多くの方に手に取って観ていただきたい。
あと、トークセッションの日に見た時は三冊並んであったアーサー・ランサムのうちの一冊、『長い冬休み』がなくなっていて、ああ、売れたんだ、と思ってうれしくなった。『長い冬休み』(と『スカラブ号の夏休み』)はアーサー・ランサムのなかでも、特に好きなものなので、尚更、おおーっ、と思った。