MOTに『回想のヴィトゲンシュタイン』の上映を観に行こうと思っていたのだが、朝方、昨日の日記を書いた後、少しだけ眠ろうと思って寝て起きたら、もう既に昼過ぎになっていて、すぐに出ても間に合わない時間だった。
●昨年末から正月にまでずれ込んだ忙しい時期は終わって、今、予定がまったくない。つまり、人との約束が何もない。朝起きて、今日一日何をやるのかがまったく決まっていないくて、それはすべてぼくの自由だ。一日、食って、飲んで、寝ていてもいいし、制作していてもいいし、散歩していてもいい。これはまったくすばらしいことだ。こういう時間のために生きている。とはいえ、経済的な問題があるので、このような日々は長くはつづかない(つづいたら困ってしまう)のだが。
●ここ数日、ベケットの『モロイ』を読み返している。別に、何かのために読んでいるのではないから、一時間かけても2、3ページしか進まない、という感じのペースで。もしかすると、ベケットが「書いている」ペースより遅いのではないかとも思うが、それは頭の出来が違うのだから仕方がない。優秀な運動選手が、一瞬で無意識にする判断や動きを、後からスロー再生して解析しているようなものかもしれない。本の余白が書き込みでびっしりと埋まる。こうやって読むと、ベケットは面白すぎる。一つの文から、次の文にすすむ度に、えーっ、そっちかよ、と、いちいち思う。あまりに動きが細かいので、展開が憶えられない。だから、少し進んで、また戻ることになるのだが、けっきょくは、ある点から次の点への「つながり方(移行の仕方)」を正確には憶えられない。常に、今、読んでいる「ここの部分」が面白いので、いそいで先に進む必要がまったくない。