2019-07-26

●人間以外に、仰向けの状態で眠る動物はいるのだろうか。小鷹さんのツイートをみて思った。寝返りという跳躍。

https://twitter.com/kenrikodaka/status/1145596608655966208

《赤ちゃんは、寝返りを打ち始めた頃、仰向けの自分と、うつ伏せの自分とで、全く異なる自己を体験しているのではないか。なにせ、その頃は、苦労して一旦身体をうつ伏せに転じることができたところで、すぐに仰向けの状態に戻れるなどという保証はまるでない。周りに親がいない時であればなおさら。》

《素朴に考えると、これは一種の恐怖心を呼び起こすように思うが、「自己の切り分け」が、この種の恐怖から目を逸らすための心理的機制として有効であろうことは十分に想像できる。寝返りのたびに、寝返る前のことは忘却し、そのときの重力状態を主とする、まるで違う自分へと転調する。重力的自己。》

《この線で考えてみると、幽体離脱における、自己の分離による自由な感覚と、元の鞘に戻れなくなるかも的なリスキーな感覚とが同居する、例の「後ろめたさ問題」の起源を、この種の寝返りの時期の外傷的体験に求める、、そんな仮説を立ててみることもできそう。》

●直立して二足歩行する動物であるがゆえに、プレ二足歩行期として一定期間存在する、横臥状態でいることを強いられる時期。この時、仰向けであるかうつ伏せであるかという二種類の反転的な重力環境に置かれる(他者に抱き上げられれば直立に近い重力状態になるだろうが)

このどちらであるのかは、おそらく最初は完全に他者依存であっただろう。そこに、寝返りという出来事が生じる。これは、半ば能動的行為であり、半ば予想外の出来事であるのだろう。この、半ば予想外の重力反転という状況変化を、それ以前の自己に対する自己の切り分けによって処すると考えるのは納得できる。重力以外にも、目の前にあって圧迫してくる地面、自由にバタバタ動かせなくなった手足など、身体-環境の関係が大きく変わるから、自分が、別の身体-環境へとシフトしたと感じてもおかしくないだろう。

ここで起こる、自己の重力的二重化は、いわゆる鏡像的な自己の二重化、ミメーシス的(ミラーニューロン)な二重化とは出自を異にする、もう一つの別の二重化として、人間の身体で基底的に働いていると考えることができるのではないか。前者は、「わたし」と「あなた」との二重化であり、後者は「このわたし」と「あのわたし」の二重化と言えるのではないか。