●小鷹研究室「からだは戦場だよ2018Δ(デルタ)」(やながせ倉庫・ビッカフェ)について。23日からのつづき。
●まず重力反転大車輪計画」と「Elastic Arm Illusion」の動画。小鷹さんのツイッターから。
https://twitter.com/kenrikodaka/status/1075396069469564928
●「重力反転大車輪計画」では、ヘッドマウントディスプレイをつけて仰向けに横たわり、両腕を伸ばして鉄パイプを握る。その鉄パイプは補助人も握っている。補助人は被験者(という言い方でいいのか?)の腕を斜め上に引っ張るように、体重をかけて体を後ろにそらす。
HMDをつけた被験者には、自分のアバターとして骸骨の身体が与えられている。補助人が腕を引っ張ると、被験者は自分の腕がゴムのように伸びるのを感じる。伸び縮みするゴムの腕を補助人が限界まで伸ばし、さらに引っ張ろうとすると、引っ張る力とゴムの弾性に引き出されるかのように、握っている鉄パイプを軸に身体が回転するように、頭部にあるわたしの視点が、横たわった位置からずれはじめる。横たわった自分のからだを置き去りにしたまま、鉄パイプを軸に回転するもう一つの身体が地中からあらわれてくる。そして、「わたし」の視点は回転する身体の頭部の方へとするっと移行している。この時、実在する自分の身体は横たわったままなのに、仰向けで上を向いていた感覚から、まるで鉄棒で回転するみたいに、宙に浮いて下を見下ろす感覚へと、重力の方向が(回転するように連続的に)反転する。
ここで、横たわる自分を残したままで、ふわっと浮き上がるような、回転的な幽体離脱が経験される。そして、わたしの視点=身体が回転して、横たわる自分を見下ろすようになると、それまで腕を「引っ張られていた(受動)」ように感じていたのが、まるで、横たわる自分の腕を、わたしが「引っ張っている(能動)」ように感じられるようになる。つまりここで「わたし」の身体の位置は、被験者から補助人の方へと移行しているかのようなのだ。
そして、「一、二、三、で手を離してください」と言われ、手を離すと、それまで力をかけて引っ張っていたことの反動がきたかのように、わたしの頭部(≑視点)が身体から外れて、後方へとすっ飛ばされていき、ごろっと地面に転がる。ここで、頭部が後方へ飛んでゆく感覚がリアルなのは、「わたし(の身体)」が力や体重をかけて、もう一人の横たわる自分の腕を引っ張っていたという感覚があるからで、つまり受動と能動との反転(被験者と補助人の位置の入れ替え)が自然に起こっていたということだろう。もし、横たわったまま引っ張られているという感覚の方が自然であれば(基底にあれば)、手を離すことでバランスを崩すのは、自分ではなく相手であるはずだから、頭部がすっ飛ぶという感覚が「くる」のを感じられなかっただろう。
これはすごい体験だった。回転による連続的な頭部(視点)の分離と、それに伴う見上げることと見下ろすこととの反転に、受動と能動の転換が加わり、さらにそこに、腕がゴムのように伸び縮みする感覚が加わる。そして、今までいくつか体験した「首が吹っ飛ぶ」装置のなかでも、これが一番リアルに首が飛んだ。
(画像は「からだは戦場だよ2018Δ 予告篇(小鷹研究室)」より)




●「Elastic Arm Illusion」では、とにかく体が尋常ではなくリアルに伸びる。HDMを取り外した後に、腰の位置が固定されていたということを確かめたのだが、それが信じられないくらいに、伸びている感覚があった。
(ぼくは、腕よりも、脚の方がよりよく「伸びた」感じがあったが、個人差があるようで、腕の方が「伸びる」感覚が強い人もいるということだった。)