2019-09-15

NHKのドラマ(といっても、ぼくはU-NEXTの配信で観ていたのだが)『だから私は推しました』を、最後まで観た。

いわゆる「地下アイドル」を題材としたドラマで(オタク気質というわけではない普通のOLが、ちょっとした偶然から地下アイドルにハマってしまう話)、ドラマとしてすばらしく面白いというほどではないのだけど、細かいところまで丁寧に取材が行き届いていて、そのレベルでとても感心させられてしまった。

紋切り型、無知からの思い込み、偏見といったものが、それらをかわすようにして丁寧に避けられて、作られている。普通のOLが主人公であり、オタク向けにつくられているドラマではない(基本的に、地下アイドルになど興味がないであろう視聴者に向けたつくりになっている)のだが、おそらく、けっこうディープなオタクが観ても、それほど違和感はないのではないか。

(ぼくはネットの情報しか知らない「にわか」で、地下アイドルにそんなに詳しいわけではないので、深いオタクの人に意見を聞いてみたいのだが。)

それだけと言えばそれだけのことなのだが、的確な取材に基づく思い込みや偏見の解除というのは、それだけでとても重要なことなのではないかと思う。地下アイドルという文化にかんする偏見を避けて通りながら、決して、それを手放しに肯定しているというわけでもなく、危ういところは危ういものとして描いているところも、バランスがとれていると思う。

(アイドルだってオタクだって、別に普通の人だよね、というスタンスでつくられている。)

地上波のドラマなので、そこまで深い掘り下げがあるということではないし、きれいな絵や話にしすぎていると思うところもないではない---必ずしもリアリズムではない---が、無駄な偏見をあおるような紋切り型を安易に使わないということを徹底する、というところは実現されていると思う。

(たとえばNetflixで配信されている「TOKYO IDOLS」というドキュメンタリーはその逆で、ドキュメンタリーでありながら、制作者たちがあらかじめ持っている思い込みのようなイメージが、取材対象にそのまま押しつけられている---あらかじめ持っているイメージに沿ったところだけを適当に切り取っている---としか思えない、雑につくられた作品だと思う。「文化人」たちによって添えられたコメントもけっこう恥ずかしい。)

テレビ(地上波で放送されるテレビドラマ)という環境のなかで製作されたことを考えれば、これはかなり大したことなのではないかと思う。現代の日本でも、時代は確実に進歩していると思えるところも、多少はあると思えると、うれしい。