2020-05-23

●今月の「新人小説月評」は対象作品が19作もあって、読むだけで本当に大変だった。面白いと思ったのは(そのくらいはここに書いても問題ないと思うけど)、山本浩貴「pot hole(楽器のような音)」(ことばと)、鴻池留衣「最後の自粛」(新潮)、千葉雅也「マジックミラー」(ことばと)、坂上秋成「ファルセットの時間」(早稲田文学)。

鴻池留衣はデビュー作を読んだときに相当な曲者だと思ったのだけど、ここまで曲者をこじらせてくるのか、と、ニヤニヤしながら読んだ。卑小であり、かつ、パラノイアックで拡張性をもつ「男の子たち」の世界。確信犯的な(半ば意識的で、半ば地でもあるのだろう)ホモソーシャル性とミソジニーの(大仰な)徹底を、ひとつのアイロニーとして形象化している。これは、おちょくりであると同時に(内的に)本気で演じられてもいて、そのようなものであること---ミイラを演じ切ることでミイラ取りでもあろうとする綱渡り---によって警鐘(批評)でもある。

●53歳になった。