2023/08/03

⚫︎『女の決闘』(映画美学校フィクション・コース第25期高等科コラボレーション実習作品)、ヤバかった。終わってみれば、いかにも高橋洋っぽい着地だと思えるし、全体の構造も把握できるように思えるが(「終わってみれば」いかにも高橋洋的構造だと分かるのだが)、観ている間はずっと、今何が起きているのか、これはどこに向かっているのか、ここでは一体何がなされているのか、が、ずっと不確かなままで揺れ動き、次々と書き換えられていくようで、展開があるごとに、なんだこれ? なんだこれ? なんだこれ? ヤバい、ヤバい、ヤバい、となって、不安なまま目が離せなくて釘付けになった。いろいろな意味で(手放しで全肯定はできない危うさを含むという意味で)問題作であり、今後も何度も観直して考えることになる映画だと思う。

女の決闘 原作:太宰治 脚本・監修:高橋洋 監督:山中隆史(第一話) 大工原正樹(第二話) 鴨林諄宜(第三話) 高橋洋(第四話) - YouTube

⚫︎「マルドロールちゃんの歌」に触発されてクリステヴァの『ポリローグ』を買った。そういえばクリステヴァは読んだことなかった。表紙の絵はジョットの「最後の審判」の部分で、最後の審判の日に、「この壁画」が描かれているスクロヴェーニ礼拝堂の寄進者であるスクロヴェーニ(向かって左の人)が、聖母マリア(三人いる?)に「(この壁画が描かれている)この礼拝堂」を捧げているところ。スクロヴェーニ礼拝堂では最後の審判の対面の壁に受胎告知が描かれてたりして、礼拝堂全体でキリスト教の大きな世界観が示されているのだが、その中で、わざわざこういう自己言及的な場面を選んでいるところが意味ありげ。