●ここのところ生活が著しく不規則なせいか、夜、眠ろうとしてもちゃんと眠れないことがよくある。そのためなのか、昼間、何の前触れもなくいきなり、泥沼のなかに引きずり込まれるような強い睡魔に襲われることがしばしばだ。その睡魔が、電車で座っているような時に襲ってくるとしたら、それはむしろありがたいとさえ言える。最寄りの駅から電車に乗って、一駅ほどで運良く座ることが出来、鞄から出した本を広げ、ものの2、3ページ読んだだけで、激しい睡魔にみまわれ、沼の底から足を引っ張られて泥のなかに埋没するようにして眠りに落ちてしまった。途中何度か、ふと目覚める度に、隣に座っている人が入れ替わっていた。目覚めるとは言っても、埋没した泥のなかから顔だけが一瞬外へ出たという感じで、すぐまた眠りに落ちてゆく。もしかすると、その「ふと目覚める」うちの何回がは目覚めたという夢だったかもしれないが。突然、周囲の泥が全て干上がってしまったかのようにすっきりと目覚めると、電車は橋の上を通っているところで、カタンカタンという線路上をはしるのとはやや調子の異なる音が聞こえ、窓からは河原の広がりと、大量の水が流れる水面が見えた。