●作家論の原稿、後半への滑り出し。もともと、この作家について何か書きたいと思ったのは、後半で取りあげる系列の作品の一つを最近になって読んだからだった(雑誌掲載は2007年のもの)。前半で取りあげた作品(初期作品)については、以前から読んでいたし、書くべきことのイメージもだいたいあったと言えるのだが、後半に取りあげる作品は、本当に最近はじめて読んで驚いたばかりのものであり、どこまで突っ込んで書けるのかは自分でもまったく予測できない。だからここからが踏ん張りどころ。この系列の作品は、まだ本になっていないし、現在も、様々な媒体で散発的に進行中というか、増殖中なのだが、まちがいなく、この作家が新たな段階に踏み込んだことを示していると思う。とはいえ、この系列の最初の作品は、既に2004年には発表されているのだが。
ぼくはいままで、決してこの作家の良い読者ではなかった。デビュー作はすばらしく面白いけど、結局、それが一番面白いのじゃないか、とか、思っていた。しかし、作家論を書くために改めて読み返し、今まで知らなかった作品も読んでみて、その認識はまったく覆された。この原稿を書くために、この作家の作品を詳細に読んでゆくことは、とても楽しく、幸福な経験としてあるのだった。