●夢。実家の近くの川原の土手に生えている、昔よく登ったくるみの木が、気づくとすごく大きく成長していた。うわっ、こんなにでかくなったのか、と見上げるのだが、見上げれば見上げるほど、その視線にあわせて、きりなく視界からはみ出してゆくくらいに大きい。だが、よく見るとそれは、くるみの木の幹ではなく、くるみの木の樹皮とそっくりに加工−舗装された、たんなる土地の盛り上がりであった。あらためて当たりを見回すと、川原全体が、くるみの樹皮様に加工されたコンクリートで整備されているのだ。土も、砂利も、当然、雑草もなく、まるで縦に長いプールのようになっている。なんでこんなことをしてしまうのか、と激しい怒りにかられて土手から川原に降りて行くと、川にはまったく水が流れていない。おそらく、いったん川の水を全部抜いてコンクリートで覆い尽くし、その上であらためて水を戻そうという計画なのだろうと推測した。なんと乱暴なやり方なのか、と、フナやザリガニやカエルは一体どうなったのか、と、怒りはますます増すのだった。すると、上流から少しずつ水がやってくるのが見えた。まだまだ遠くと思えた水の塊は、少し目を逸らした隙にみるみる近づいて、おそろしい量感で眼の前にあった。あわてて、岸にまで戻ろうとしたが、川幅は思いの外広く、しかも足が思うようには動かない。這うようにして、足下を濡らすだけでなんとか岸まで戻ることは出来たが…。
あまりに横暴なやり方に反対する我々は、抗議のためにプレハブでアジトを設置し、そこから川原を監視している。日光が降り注ぎ、川原では、大勢の水着を着た人々が楽しそうにはしゃいでいる。岸では、なにか大がかりなイベントがはじめられるようだ。我々の仲間内でも普段から跳ね返った行動をすると言われている一人が、とつぜん川へと降りてゆき、人々がはしゃいでいるより上流で、ズボンを脱ぎ、小便をし、排便まではじめたのだった。彼はすぐに係員に確保された。我々の仲間内でも、彼の行為への批判と賞賛とが別れた。批判する者は、彼は敵をはき違えていると言う。しかし、あらためてよく見てみるまでもなく、この川はもともとそれほど水質がよい川ではなかったのではないか。実際に見てみても、水の色は濁っているし、何やら不潔そうな物が次々流れてくるではないか。彼の糞などたいした効果はない。人々はこのような汚水にまみれて、何故あんなにも楽しそうにはしゃいでいるのだろうか。
●夢。友人と、友人の彼女と、ぼくとで、何かの重要な視察を行っていた。しかし、急に雨に降られて、とりあえず友人の部屋に避難することになった。友人の部屋には、もう既に何人か避難してきた人がいたし、ぼくたちの後にも、次々と人が避難してきた。狭い部屋はすぐに人でいっぱいになる。知っている顔もちらほらいるが、ほとんど知らない人たちばかりだ。肩を叩かれて振り返ると「古谷さんですね」と言われる。「はい」と答えると、「お仕事、いつも拝見させていただいてます、機会がありましたら是非ウチでも」と名刺を渡される。よく意味がわからないまま「はあ」と答えて名刺を受け取り、続きの言葉を待つが、それっきりで、その人はもともと話していた隣の人と真剣に話し込んでいる。さらに人が増えて、隙間が詰められ、もう座ってはいられなくなって立ち上がる。狭い部屋は人でびっしりで、友人も、その彼女も、もうどこにいるのか分からない。ポケットを探すがみつからず、もらった名刺をどうしていいのか分からない。