●空がある。空があることを意識するのは、なにも上を見上げるということだけではない。地上を見ること。上から降ってくる光を見ることでもある。空があって地面がある。上があって、下がある。地上には重力がある。そして地面には起伏がある。上から注がれる光は散らばる。空気のなかで散らばり、ものに当たって散らばる。地上には空気がある。空気には温度があり湿度がある。ホコリやチリや花粉も混じっている。温度や湿度は空気を動かす。大きな空気の流れは天気を動かす。小さな空気の流れは山や建物に当たって方向をかえる。坂道をのぼる時に見えてくる空。くだる時に見えてくる空。体勢の違い。重力と身体の関係。歩く時は前を向く。前があって、後ろがある。右を見る。左を見る。右があって、左がある。空間と身体の関係。角を曲がると景色がひらける。光がひらける。歩いていると空気がかわる。温度や湿度がかわる。光がかわる。日が暮れてゆく。
色と色との関係、絵の具の上の層と下の層の関係によって、これらすべてを表現することができる。絵画は、シンプルにそういうことでいいんじゃないかとも思う。