●外から、冷たい風が吹く音(いかにも冷たそうな音)、ゴウゴウと唸る音が室内にまで響いてきたので驚く。真冬の木枯らしのような荒れた音。天気予報では、昨日とほぼ同じくらいの気温だと行っていたが、空気が冷え込んで、寒いと言うより冷たいと感じられる。午後になって、部屋を出て駅へと向かう坂を下る。地上ではそれほど強くは吹いていないけど、空では雲が風に流されて散り散りになっている。暗く澄んだ青を背景に、薄い雲が光を通過させて、自ら発光しているみたいに白く輝く。足下が冷え、手先が冷たく、頬は火照る。電車に乗っても暖房はほとんど効いていなくて、駅についてドアが開く度に風が吹き込んで、ゾクゾクッとする。うとうとと眠りにはいっても、キンキンに冷えた鉄製のロッカーとか自動販売機とかに、手や頬や身体を押し付けている夢を見て、ゾクッとして目が覚める。それでもまた眠ろうとする。目が覚める。眠ろうとする。寒い電車のなかと、冷えた鉄に押し付けられる場面とが交互にあらわれ、むしろ冷えた鉄の感触の方がリアルなくらいだ。