●『フラクタル』を1〜5話までDVDで。1、2話を観ている時は全然ダメじゃん、これ、と思っていたけど、5話くらいまでくると、それほどダメでもないかもしれないとも思うようになった。もうちょっと先まで観てみようか、と。まあ、長く観ているうちにどうしても登場人物に愛着を感じるように自然になっちゃったりもするので。いや、でも、全体に冴えないことにかわりはないけど。
最初は、何というか、アニメをコアなマニアだけではなく一般的な観客に対しても「開く」ために、「一般の人でも受け入れ可能なアニメ」っていうのを市場調査で割り出してきて、それに基づいてつくったみたいな感じで、あらゆる要素が「いかにもそれらしく」かつ「ぬるい」と感じられた。「この程度のことをやっとけば騙されてくれるだろう」というような、観客を見くびった態度としかみえなかった。
でも、話が進むうちにそれなりにいろいろ複雑になってきて(紋切型の凸凹コンビの片方が死んだことで、ちょっと観方がかわった、そういう話じゃないと思っていたから「殺しちゃうんだ」と驚いた、そして、コンビでなくなったもう一方のキャラがそれによって感じがかわったりして、最初に出てきたいかにも紋切型でミエミエのキャラの性質が、次第に崩されてゆく感じに、ちょっとへーっと思った)、まったく観られないということはないかなあ、という感じにはなってきた。とはいえ、コンセプトにしろ、設定にしろ、演出にしろ、キャラクターにしろ、もろもろのデザインにしろ、声優の選択にしろ、あらゆる要素が平均点をやや下回るくらいという感じで、総合点としてはそんなに悪くないとしても、なんかセンスがないというか、切れがないというか、中途半端というか…。
要素を多くして複雑にすることでなんとかもたせてはいるけど、その要素の一つ一つの精度が低いから(あらゆる要素が、どこか他でみたことのあるものの劣化版にみえてしまう)、それなりに実力のある人たちが、七割くらいの力で流してやった仕事、みたいな感じにみえてしまう。まったくのダメダメではないからこそ、より一層ダサく感じられてしまうというか。
でも、1、2話で示された、いかにもな感じのアニメ的な世界が崩されてゆく過程が今後描かれてゆくのだとすれば、この作品にもうちょっと付き合おうかという気にはなる。