埼玉県立近代美術館の「戦後日本住宅伝説」がおもしろかった。住宅建築っておもしろいなあ、と思った。北浦和は遠いけど、行ってよかった。
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=292
この展覧会でいいのは、実際の空間がすごくイメージしやすい展示になっていること。写真と模型と図面と映像で、特に、模型と視点が動く映像とをつきあわせると、自分がその内部にいるような状態として、空間がかなり明確にイメージできる(東孝光「塔の家」のコーナーには、原寸大の図面もあった)。細部を見るには写真がいいけど、写真は案外、スケール感をよく分からなくさせるところがある。
あと、作品によっては、それが建てられている周りの状態まで模型として表されていて、「この場所」に「これ」という文脈がわかるようになっているのも、よかった(安藤忠雄住吉の長屋」など、空間それ自体がおもしろいというより、この空間が、この場所にあるから意味があるということだろう)。
閉館一時間前くらいに着いたので、時間が足りなくて、展示してあるすべての作品について、丁寧にその空間をイメージし、味わうことができたわけではないけど(時間をつくってもう一度観たい、遠いけど)、ぼくの趣味としては、増沢洵「コアのあるH氏の住まい」と坂本一成「水無瀬の町屋」が好きかなあと思った(ああ、モダニズム趣味ね、と言われれば、それまでだけど)。石山修武「幻庵」とか伊東豊雄「中野本町の家」とかは、いろんなところで写真を見るのだけど、いったいどういう風になっているのか写真ではいつもよくわからなかったのが、ああ、こういうことなのか、と。黒川紀章中銀カプセルタワービル」も、外観の写真はよく見かけるけど、内部があんなになっているとは……。ある意味、迷いがないというか、やり切っていてすごいと思うけど、「昔の未来」だなあと(未来がこのような形でイメージされた時代は完全に過去になった、と)思った。
北浦和までは京浜東北線で行ったのだけど、京浜東北線と言えば、昔々の思い出で、芸大の試験が終わった後、芸大のある上野から予備校のある横浜まで戻る時、上野から京浜東北線に乗って、普通なら東京で東海道線に乗り換えるのだけど、脱力していて乗り換えるのが面倒で、ぼんやりと、このまま乗っていても横浜まで行くからなあ、と考え、そのまま乗り続けていた。東海道線よりは時間がかかることは知っていたが、自分がイメージしていたよりもずっとずっと時間がかかって、いつまでたっても横浜までたどり着かず、一方で、結果はまだわからないけどとりあえず受験は終わったというホッとしたような、気が抜けたような感覚と、このまま永遠に目的の駅には着かないのではないかというとりとめのない感じとがあいまって、なんともいえない強い浮遊感とともに電車に揺られていた。京浜東北線に長く乗っていて、その時の感覚を思い出した。
結局ぼくは、作品というものに、そのような浮遊感を求めているようにも思われる。