●『ウェス・クレイヴン's カースド』をDVDで観ていた(近所のレンタル店には『エルム街の悪夢』ですら2010年版しかなかった……)。ウェス・クレイヴン成分がたっぷりでとても面白かった。おーっ、やってる、やってる、という感じ。
ただ、難しいと思うのは、この映画は一方でホラーであり、明らかにジャンル映画なのだけど、映画としては、いわゆる「映画マニア」がミニシアターで観て楽しむような映画になっていて、『エルム街の悪夢』や『スクリーム』のように、広く観られ得るような、大ヒットが期待できるような作品ではないと思われるという点だ。ごく普通に考えれば、『スクリーム』シリーズのような先鋭的なホラーをつくった人が、古典回帰したというか、古臭いホラーに戻ってしまったような感じに見えてしまうと思われる。実際、エンターテイメントとしては、2005年にこれは明らかに古いように思う。ウェス・クレイヴンのファンならば(というか、映画ファンならば)、この作家の空間的展開力と空間に対する嗜好性を観て、それを味わい、楽しみ、驚嘆し、評価することができると思うのだけど。
(この映画は、マルホランド・ドライブで事故が起きるところから始まるのだけど、2005年の時点では、この映画よりもリンチの方が、一般的にはずっと「エンターテイメント」として受け入れられやすいように思われる。)
(オタクの主人公に対して「このホモ野郎」とか言ってバカにするマッチョなレスリング部の部長が、実は、自分自身がゲイであることに悩んでいた、という設定も、紋切り型を一ひねりしただけで、それによってこの部長の人物像に厚みが出るということもなく、キャラが立つわけでもなく、「ジャンル映画の紋切り型」に対する距離の取り方としても、いま一つだと思った。例えば、タランティーノなどを見慣れている一般的な観客からすれば古臭いという感じがしてしまうのは避けられないように思う。)
(あと、ウェス・クレイヴンの映画は、『スクリーム4』や『エルム街の悪夢 ザ・リアル・ナイトメア』のような、自己言及ネタというか、自分自身に回帰する構造が良く出てきて、そこも好きなところなのだけど、この映画での「業界自己言及ネタ」はあまり上手くいっていないように思われた。)
このあたりからウェス・クレイヴンは、エンターテイメントをつくる人なのか、作家の映画の人なのか、という立ち位置として、ちょっと難しい感じになってしまったのかなあ、という風には思った。