●『ディスコード』(ニコラス・マッカーシー)。ここのところ、次の小説のヒントにするために「館もの」のホラーをDVDでいろいろ観ているのだけど、この映画は、ここ何年かで観たホラー映画のなかでは飛び抜けて面白かった。いや、ホラーに限定しなくても、最近、(アニメ以外の)映画を観てこんなに興奮したことはあまりない。最近あんまり映画を観ていないからというのもあるけど。つづけて二度観てしまった。
特に新しいことをやっているというわけでもないのだけど(むしろJホラーなどで散々やられていることをやっているのだが)、一つ一つの表現が研ぎすまされているし、細かい工夫やアイデアやセンスがいちいち効いている。最後まで観た後から振り返って考えると、要素の一つ一つはほんとに普通なのだけど(後から「あらすじ」して振り返ると「お話」としては特にすごいというわけではないけど)、観ている間は展開が全然読めないし、一つ一つの細部や一手一手の積み重ねにいちいち驚かされたり、ニヤッとさせられたりする。定型通りといえば定型通りではあるけど、にもかかわらず、表現としてありきたりに感じられたり紋切り型だと感じられたりするところがほとんどない(主人公と警官との関係がちょっと紋切り型っぽくてもう一ひねりあればと思うくらい)。全く新しい何かが生まれたというようなことではなく、既にあるホラーの様々な表現を研いで研いで研いだ結果、描写がキレキレに冴えて、ちょっとすごいことになった、ということなのだろうと思う。本当にちょっとした、紙一重の違いの積み重ねで、こんなにも冴えた感じになるのだなあ、と。こういう風な形で表現が研ぎすまされてゆく(しかもそれが、ほぼ無名の監督の作品としていきなりぽかっと現れる)というところが、ジャンルとして成立しているホラーの強みなのだと思う。でも同時に、この監督には次はジャンルに納まらないものをつくってほしいとも思ってしまう(黒沢清みたいな感じの監督になれるんじゃないかと思うのだけど)。
あと、主人公の女性が、最初はいかにも「低予算のホラーに出てきそうな女優」という感じだったのに、作品が進んでゆくにしたがって、この映画はこの人じゃないと成り立たない、と思えるようになってきて、とてもいい。
●「有頂天家族」第二話はちょっと面白かった。
●小説の、最初の二千字分くらいを書いた。でも、これがこのまま先に進んでもいいものなのかは、まだ確信がもてない。次は、今までよりももう少し長いもの(といっても、60〜70枚くらい)にしたいと思っているのだけど、どうすればそれができるのかはよく分からない。一応、ココロの目標として今年じゅうに最後まで、というつもりで。