●ツタヤのレンタルを利用して、(マンガをほとんど読まない時期が長かったので)未知の領域を開拓するみたいに、ランダムにいろいろなマンガを読んでみているのだけど、ちょっと面白いと思った作品の一つに『セキセイインコ』(和久井健)というのがあって、物語の構えがどんどん大きくなってゆくなあという感じで読み進めていたのだけど、いきなり「END」となっていて、えーっと驚いた。5巻目で終るのだけど、読んでいる間、この巻で終るなどとはまったく思ってもみなかった。
終る気配が全然ないまま、断ち切られるように終わっていた。中規模のエピソードが一つ納まったところで、唐突に主人公の謎が明かされて、それで終わり。おそらく、人気が出なくて打ち切りということなのだろうけど、マンガの世界は厳しいなあ、と。絵の表現力もとても高いし、かなり面白いと思うのだけど、話が複雑すぎたということなのだろうか。
現代の高校が舞台で、記憶を無くした主人公の少年がその謎を追ってゆく話だったのが、3巻でいきなり舞台が満州に飛んで物語の構えが大きくなって、これは完全に長期連載モードに入ったのだろうと思い、それまでの話が充分にユニークで面白かったので、この拡大路線が吉と出るのか凶と出るのかと読み進めると、この満州編がかなり面白くて、歴史的にも地理的にもさらにスケールが大きくなっていった。
で、再び舞台が現代の日本に戻って、歴史的に因果の深い二つの組織が主人公を狙っているということになって、それらに対抗するために主人公は仲間を集めなければならない、という話の流れになる。設定が明らかになり、一通りの要素が出揃って、さあ、ここから物語が動き出す、という感じで4巻が終わる。
ここまでの流れで主人公には仲間が二人いる。5巻の冒頭で新たな人物が現れて、彼は味方なのか敵なのか…。そして主人公の前に満州編から因果のある敵があらわれ、主人公たちはなんとかこの敵を倒すことが出来た。さあ、これからどうなる、というところで、いきなり主人公の謎が明かされて、終わり。いや、まだ話が大きくなっていってる途中だよね、と。
かなり面白いマンガなので、掲載誌をかえてでもつづけて欲しいと思うのだけど、ネットで調べたらこの作者は既に新しい別の作品の連載をはじめているみたいなので、この作品を再び始めるというのは難しいかなあ、と。ただでさえ、一度放り出してしまった作品を、それを描いていた時と同じ感じで再開できるまでテンションを上げるのは困難だろうし。
最近ようやく『二十世紀少年』(浦沢直樹)を読んでいて(まだ14巻までだが)、何年も連載がつづくような「長くつづく物語」が、その都度その都度で読者を引っ張り、その都度その都度でアイデアを絞りだしながら、その「長さ」において何をやろうとしているのか、という面白がり方の感じが少し掴めてきて、『セキセイインコ』にもまた同様の感じ(長くつづくことによって生まれる面白さの萌芽のようもの)をみていたので、とても残念で、もっとつづいてほしかったなあと思うのだった。