●『20世紀少年』22巻分と『21世紀少年』上下巻を最後まで読んだ。このマンガについては、途中で飽きてもともかく最後まで読むということに決めて、最後まで読んでみた。
最後に、偽物の「ともだち」の正体が主人公の口から告げられるのだけど、えっ、それって誰だっけ、と、しばらく考えなければ分からなかった。これだけ長く物語がつづけば、主要なキャラクターはほぼすべて深く掘り下げられているので、読んでいるうちに忘れてしまうくらいの目立たないキャラじゃないと、矛盾なく「犯人」にすることが出来なくなってしまうのだなあ、と。なるほど、やられた、という「意外な真犯人」はつくれない。とはいえ、これだけの話を、これだけ長く引っ張って、シリーズものではなく「一つの物語」として、目立つような大きな齟齬はない形で納めたのはすごいとは思った。
基本的には、エピソードが煮詰まってきて、さあ、重要な謎が明かされるぞというところに来ると、パッと舞台がかわり、別の人物を中心とした別の視点からの物語が始まって、そこでまた、重要な謎に近づくと、また舞台が変わって、別の視点からの人物が……、ということで、そのパターンでずっとひっぱってゆく。途中でさすがに、このパターン自体にちょっと飽きてくるのだけど。
作品としての基本的なトーンとか、軸になる主題や感情のようなものはなくて、とりあえず、面白くなりそうなエピソードや読者を引っ張れるようなパターンを、思いつく限り何でも投入してゆく感じ。その一つ一つに関しては面白いものもあれは、うーんと思うものもあるけど、その幅の広さはすごい。こういう王道の娯楽マンガを最後まで読み切ったのは人生ではじめてではないだろうか。
(あと、人物や事件を、あまり咀嚼することなく、けっこう直接的に引用することが多い。人物の顔や名前など、参照元がすぐに分かる感じで出してくるのだなあと思った。)
全部で24冊で完結するのだけど、おそらく、この半分の10冊程度にまとめていれば、作品としてもっと引き締まって、筋も通った、完成度の高いものになったのだろうと思う。でも、作品としての完成度よりも、24冊分つづけられるほどの人気があり、人気の持続があった、ということの方がずっと重要なのだろう。こういう作品については、完結した後から後追いでまとめて読んで、ここが弛緩しているとか、ここは同じパターンの繰り返しだとか、そういう指摘することには何の意味もないのだろうと思う。
●『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』(マキヒロチ)というマンガがちょっと面白い。吉祥寺で不動産屋をやっている「大きな」双子の姉妹が主人公で、吉祥寺の部屋を探しに来た客に、「じゃあ、吉祥寺やめよっか」と言って他の街の部屋を紹介するという、東京の街紹介+人物スケッチみたいなマンガなのだけど、主人公の双子のキャラがとてもよい。
バウスシアターの閉館からはじまり、吉祥寺もつまらなくなったよねー、と言い合いながら吉祥寺で仲間たちと暮らし、客には他の街の部屋を紹介する。このパターンがずっとつづくのかと思うと、2巻になると、自分たちの住む家のリノベーションの話に絡んで二人の過去が匂わされたりもする。ぼくはやはり、王道の「物語マンガ」より、こういう方が好きのかなあと思った