永久機関……? 「新物質「時間結晶」、2グループが生成に成功」(WIRED)
http://wired.jp/2017/04/10/new-matter-time-crystals/
《自然界で発生する塩、ダイヤモンド、水晶などの「結晶」は、原子の基本構造の繰り返しによって生成されている。つまり結晶とは、3次元空間のある軸に沿って周期的な構造パターンを繰り返す物質のことを指すわけだ。もっとも、だからといってこのパターンが全ての方向に等しく周期的なわけではない。》
《六方晶系の結晶が円筒状に巻かれた構造をもつカーボンナノチューブを例にとると(…)、原子のある場所とそうでない場所が明確であり、この結晶の中心部から見渡してみると全ての方向に全く同じパターンが配列しているとはいえない。そこには粒子がつくり出した“ムラ”があり、科学的にいうと、結晶とは「連続的な空間の対称性を自発的に破る物質」として定義できる。》
《では、それが「空間」ではなく「時間」ならどうなのか。空間と同様に、時間にも対称性がある。「並進対称性の破れ」という名の“ムラ”は、時間軸でも起こり得るのだろうか?》
《ウィルチェックは2012年、通常の結晶が空間的に周期的であるように、平衡状態・最低エネルギー状態にある物質が、時間的に周期的である仮説構造をもつという時間結晶の構想を発表した。》
《この理論によると、時間が一定方向に流れるという“自然な対称性”が、結晶内では破られてしまうことになる。これは、量子力学的効果のために、原子またはイオンが互いに離れていても相互作用することを想定しており、粒子は系に入力されるエネルギーなしにして、初期状態から次の状態へと移動し、一定の周期で初期状態へと戻るといった、時間に規則正しい振動を繰り返す。》
《しかしこの状態には、物理学的に問題がある。何のエネルギー入力もなしに系が振動を繰り返すとなると、それはまるで永久機関のように見えるはずだ。これはエネルギー保存の法則に反することになり、古典的にも量子的にも実現されるはずのない系だ。実際のところ、2015年には、東京大学教授の押川正毅と渡辺悠樹らに、平衡状態にある時間結晶の存在を否定されている。》
《彼(ノーマン・ヤオ)は、熱平衡に達することが決してできない周期的に駆動される系では、時間結晶が可能であるかもしれないと主張。ウイルチェックが提唱したような平衡状態にある「閉じた系」ではなく、非平衡状態にある「開かれた系」での時間結晶の作成を提案した。》
《「あなたがゼリーを揺さぶったとき、それが予想する揺れとは違う反応を示したとすれば、すごくおかしなことだと思いませんか?」》
《ウイルチェックが提案した時間結晶の“旧ヴァージョン”では、最低エネルギー状態になるまで冷やされたゼリーは、外から何の力も加えられずにひとりでに振動しはじめ、それが続くことになる。ヤオの主張はここまでぶっ飛んではいないものの、加えられた力の周期とは異なる周期で安定して振動し続けるゼリーというのも、十分に規格外な物質といえるのではないだろうか。》