●『リズと青い鳥』をブルーレイで観た。なるほど、これはすごい。表現の充実と繊細さという意味ですごいというのと、とても危ういバランスの上で成り立っている、その危うさがすごいということでもある。
ただ、危うさというのは、例えば『百年恋歌』のホウ・シャオシェンに感じたような危うさにも近くて、まちがいなくすごいのだけど、「すごさ」の方向性として、こっちに行ってしまうと、この先どうなのだろうかというかすかな疑問も含むような危うさでもある。
ある意味、ものごとのもっとも澄んだ上澄みを、見事な手つきですっとすくい取って見せている、その手つきの繊細さがとてもすばらしいのだけど、この上澄みの、細やかでかつ豊かな震えのみによってできているような世界が、危うくも成り立っているのは、『響け!ユーフォニアム』によって執拗に(ある意味で泥臭く)描かれた世界が下地としてあることによってなのではないかと思った。
コンクールという世俗的目標のみもふたもなさや、黄前久美子的などんくささとずるさ、高坂麗奈的な硬い強情さ、といったものが、この作品において不可視の基盤として底の方で効いているからこそ、この作品の、ひたすら繊細であることによる豊かさが生きているのではないかと思った。
それは、お話の本流とはやや外れた外伝的な位置にある作品だからこそできることを、思いっきり研ぎ澄ませた形でやっているということでもある。
(フグの「小ささ」とかに感動してしまう。)