2020-10-23

●U-NEXTでヴェンダースの『東京画』を観ていた。83年に来日した時に撮ったフィルムでつくった映画。この頃、ヴェンダースは「西ドイツ」の映画作家だった。

ここでヴェンダースが撮っているのは、小津関係のインタビュー(笠智衆厚田雄春)以外では、パチンコ、花見、ゴルフの打ちっぱなし、ゴールデン街、原宿ホコ天食品サンプル工場、東京タワー、新幹線など、海外に向けたTOKYOのクリシェみたいなものばかりで、電車や自動車の中からの風景などに、ヴェンダース的な移ろうようなつかみ所の無い時間の流れはあるとしても、対象として「これ」といった面白いものが写っているわけではない(アキハバラが写ってないところに当時のシネフィル感が出てる)。

ホテルで観ているテレビに「タモリ倶楽部」が写っていて(テレビの上には郷ひろみのテープやハスミの『監督 小津安二郎』がのっている)、83年にはもう「タモリ倶楽部」はあったのだなあと思った。あと、食堂の料理の値段が今とそんなに変わっていなくて、日本の長期の経済停滞を改めて感じた(ビールの中ジョッキが450円)。

笠智衆のインタビューの部分を観ていて、とても強く祖父を感じた。似ているというわけではない。そもそも体型が違っていて、祖父はもっとガッチリしていたし、顔も大きく、どちらかというと怖い顔をしていた(笠智衆よりは東野英治郎に似ていた)。でも、なんというか、存在の雰囲気というか、佇まいから、祖父のことがとても濃く想起されたのだった。歩いている後ろ姿など、姿形が似ているわけではないのに、すごく「祖父がそこにいる」感があった。

祖父は、八十歳になる直前に亡くなった。そして今では、父が祖父が亡くなった年齢をこえている。でも父には笠智衆感はまったくない。