2021-02-17

●『クリーピー』を昨日観ていて、強く印象に残ったのが、西島秀俊がリビングのソファーに座っていて、そこから、キッチンで竹内結子が椅子に座ってテーブルで夕食の支度っぽいことをしている背中が見える場面。西島秀俊がノートに向かって集中していて、ふと気がつくと竹内結子が消えている。この「消えている」ことの、決定的に取り返しのつかない出来事が起ってしまったという感じがすごい。

直前の公園の場面で、香川照之竹内結子に、どう考えてもおかしな距離感で、異常なことを言う。そして、その場がどう展開したのか示されず、そのまま途切れて次の場面に切り替わる。竹内と香川の関係になにがしかの変化が起ったことは明らかなのに、それが示されていない。そしてその少し後の場面で、竹内がパッと消える。ベタと言えばベタな展開なのだが、この消え方が見事で、すごく怖い。

竹内は、キッチンから階段へ移動して電話をしていただけなのだが、この場面で「消えて」以降、竹内の様子は目に見えておかしくなっていく。これもまた、ベタと言えばベタな展開だ。

(ベタであるとはいえ、見事な描写だと思うのだけど、ここで竹内がおかしくなっていったのは、事後的、因果的にみれば、香川から「薬」をうたれたからだ、ということになってしまい、謎の提示・表現の充実に対して、解決のされ方が釣り合っていないと感じてしまう。勿論、薬は表面的なことで、竹内は慣れない土地で昼間ずっと一人で家にいることのストレスを溜めていたのだし、独善的な西島との夫婦関係に潜在的な不満や不信を感じていた、ということもあるのだが。)