2021-05-04

●八年ぶりくらいに書いた小説を、ある雑誌が掲載してくれそうで、とてもうれしい。掲載はまだかなり先になるようだけど、うれしいので書いてしまうのだった。

原稿用紙換算で三十数枚のごく短い小説で、八年前くらい前に「群像」に掲載された四つの短篇小説シリーズ(「「ふたつの入り口」が与えられたとせよ」「ライオンと無限ホチキス」「セザンヌの犬」「グリーンスリーブス・レッドシューズ」)のつづきとなるもの。

(小説を読んでくれた人が感想のメールのなかで「思弁的な空間」という言葉を使っていたのだが、自分がやりたいことはまさに思弁的な空間の構築なのだと思った。思弁的な空間性と思弁的な身体性の絡み合い、とか。)

実はぼくは、自分が過去につくった作品やテキストのなかで、自分で一番「手応え」を感じているのが、この短編小説シリーズなのだが、ほぼ誰にも評価されていない。

郷原佳以さんが「文學界」の「新人小説月評」で半期のベスト5の一つに挙げてくれたのと、beco cafeというブックカフェの店長が国内小説の年間ベストに挙げてくれて、その記念にカフェで磯﨑憲一郎さんとトークイベントをした、というのが数少ない反響だった。今回、小説を載せてもらえそうな雑誌を編集している人は、そのトークの現場にいた。

(前に書いた四作と、新しく書いた作品を合わせた五作をまとめて本にしたい、まとめて物質として残しておきたい、という気持ちが強くあるのだが、難しいかなあ…、と。自分のすべてが---合わせても原稿用紙換算で160枚程度しかならない---この短篇小説群に入っている、とさえ思う。良くも悪くも「自分はこうなのだ」と認めざるを得ない、というような何かとして。)